2013年07月16日
ジュゴンネットワーク沖縄細川さんの意見書
ジュゴンネットワーク沖縄、細川太郎さんの意見書が届きました。
利害関係の内容
私は子や孫の世代にジュゴンと彼らの棲める海を残すために、日本ジュゴン個体群の保護活動を行っており、日本ジュゴン個体群の存続に大きく関わる本件の利害関係人です。
意見
本件公有水面埋立承認申請は、先に提出された環境影響評価補正評価書に基づき手続きが進められていますが、その補正評価書ではジュゴンの個体群維持に及ぼす影響が過少評価されており、このまま事業が進められた場合、復元が不可能な重大な過ちを犯す可能性があることを危惧し、ここに意見を述べます。
事業者は、ジュゴンの個体群存続可能性分析(PVA)を行い、その結果環境収容力が低下した場合の絶滅リスクは、事業が実施されない場合と有意な差が認められないとし、代替施設の設置に伴う海草藻場の消失がジュゴンの個体群維持に及ぼす影響は小さいと結論づけました。しかし、この分析は大きな過ちを犯しています。
理由1.
この分析は、単純に本島周辺の海草藻場面積から埋め立てにより消失する面積を引いた値を根拠に導き出された結論であり、どの海草藻場もジュゴンが利用可能であるとういう前提でのみ成立します。しかし、実際のジュゴンは彼らが利用可能な条件を満たした餌場でなければ利用はできません。
もし仮にジュゴンがどの海草藻場も利用可能であるならば、なぜ事業者が行なった航空機調査で、本島中南部にジュゴンが確認されなかったのでしょう。本島中南部にも海草藻場は分布し、かつてはジュゴンも確認されていた海域です。調査でジュゴンが確認できなかったのは、現在それらの海域にジュゴンが棲息できる環境が整っていなかったからではないでしょうか。
ジュゴンが利用可能な海草藻場の環境条件とは、漁業活動、水質、騒音、振動、夜間照明などの人間活動の影響が少ないこと。加えて、海草藻場の底質の礫分が比較的少なく、海草被度も低いというジュゴンが摂餌するための条件を備えていることも必要です。辺野古海域を含む現在ジュゴンが確認されている海域には、これらの条件が辛うじて残されています。
本来、ジュゴンの個体群存続可能性分析(PVA)を行なう場合、これらのジュゴンが利用可能な条件を満たした海草藻場がどれだけあるか、現場を確認しながら面積を割り出し、事業実施に伴う海草藻場の消失はもちろん、水流、水質、飛行ルート下の航空機騒音および船舶、施設からの騒音、低周波音、振動、船舶の航行、夜間照明などの影響により環境収容能力が実際にどれだけ減少するかを分析すべきでした。
理由2.
個体群存続可能性分析(PVA)を行なう場合、始めに個体群存続を可能とする最小個体数を示し、その個体数を維持するための環境条件を整えた海域面積が、事業実施によりどれだけ減少するかを分析すべきでした。アセスの調査で確認されたジュゴンは3頭でしたが、幸い海には垣根は無く、かつてジュゴンが暖かい南の海から黒潮に乗って分布を広げた海のルートは現在も繋がっており、今後沖縄海域にジュゴンが補充される可能性は残されています。(2002年10月、熊本県牛深市でジュゴンが混獲されましたが、このジュゴンは沖縄から黒潮などに乗り移動したと考えられます。同様にフィリピンからジュゴンが黒潮に乗り沖縄海域へ移動してくる可能性も十分考えられます。)今回のアセスでは、確認された3頭のジュゴンの存続が問われているのではなく、日本個体群の存続が問われているのであり、今回の個体群存続可能性分析(PVA)は、論点をすり替えた不誠実な分析だといわざるを得ません。
ジュゴンの棲息域が減少した近年において、ジュゴンが確認された海域や餌場は辺野古海域に限らず、ジュゴン自身が選んだ棲息に適した海域、或は辛うじて棲息が可能な海域と評価することができます。これらの海域は、日本のジュゴン個体群の存続及び回復という観点から大変重要であり、特に辺野古海域は沖縄島の中でもジュゴンの餌場となる海草藻場面積が特に広く、ジュゴン存続に不可欠な海域です。今回の個体群存続可能性分析(PVA)の結果を鵜呑みにし、沖縄県知事が埋立承認申請を許可したならば、ジュゴン個体群存続に致命的な悪影響を与えることは明らかです。
日本のジュゴン個体数は非常に少なく、正に絶滅に瀕しています。このような状況の中で私たちに出来ることとはいったい何でしょう。ジュゴンもトキと同じように人工繁殖させ、野生に導入すれば良いのでしょうか(系統群の問題はありますが)。ジュゴンの飼育の歴史は、1955年にサンフランシスコの水族館がパラオ産の個体を飼育したのに始まり、これまでに世界で30例以上の飼育記録がありますが、残念ながら飼育下で繁殖に成功した事例がひとつもありません。一方、野生下ではアセスの調査で親子のジュゴンが確認されたように、繁殖を続けています。つまり、ジュゴンの保存(存続)に必要なのは、ジュゴンが安全に暮らせる環境と十分な餌場を確保することであり、私たちに出来ることも、唯一生息地を保全することだけなのです。
かつて美ら海水族館元館長の内田詮三さんは、ジュゴンが棲む近隣国であるフィリピン沖には、沖縄に向かって毎時3ノットの早さで黒潮が流れており、ジュゴンがこの黒潮に乗れば、沖縄まで3日でたどり着くと語っていました。つまり現在確認されている3頭のジュゴンがいずれ死んだとしても、沖縄にジュゴンが補充される可能性は残されているのです。
また、沖縄のジュゴンは世界のジュゴン分布の東の北限にあたり、この地域個体群を保存することは、世界のジュゴンにとって遺伝的多様性確保の観点からも大変重要です。それぞれの地域個体群は、棲息地の地元が保全に乗り出さなければ守れないことを考えれば、沖縄県の責任は一層重大です。
以上の理由から、ジュゴン個体群存続に致命的な悪影響を与える普天間飛行場代替施設建設に係る辺野古埋立は、断じて認めてはなりません。
利害関係の内容
私は子や孫の世代にジュゴンと彼らの棲める海を残すために、日本ジュゴン個体群の保護活動を行っており、日本ジュゴン個体群の存続に大きく関わる本件の利害関係人です。
意見
本件公有水面埋立承認申請は、先に提出された環境影響評価補正評価書に基づき手続きが進められていますが、その補正評価書ではジュゴンの個体群維持に及ぼす影響が過少評価されており、このまま事業が進められた場合、復元が不可能な重大な過ちを犯す可能性があることを危惧し、ここに意見を述べます。
事業者は、ジュゴンの個体群存続可能性分析(PVA)を行い、その結果環境収容力が低下した場合の絶滅リスクは、事業が実施されない場合と有意な差が認められないとし、代替施設の設置に伴う海草藻場の消失がジュゴンの個体群維持に及ぼす影響は小さいと結論づけました。しかし、この分析は大きな過ちを犯しています。
理由1.
この分析は、単純に本島周辺の海草藻場面積から埋め立てにより消失する面積を引いた値を根拠に導き出された結論であり、どの海草藻場もジュゴンが利用可能であるとういう前提でのみ成立します。しかし、実際のジュゴンは彼らが利用可能な条件を満たした餌場でなければ利用はできません。
もし仮にジュゴンがどの海草藻場も利用可能であるならば、なぜ事業者が行なった航空機調査で、本島中南部にジュゴンが確認されなかったのでしょう。本島中南部にも海草藻場は分布し、かつてはジュゴンも確認されていた海域です。調査でジュゴンが確認できなかったのは、現在それらの海域にジュゴンが棲息できる環境が整っていなかったからではないでしょうか。
ジュゴンが利用可能な海草藻場の環境条件とは、漁業活動、水質、騒音、振動、夜間照明などの人間活動の影響が少ないこと。加えて、海草藻場の底質の礫分が比較的少なく、海草被度も低いというジュゴンが摂餌するための条件を備えていることも必要です。辺野古海域を含む現在ジュゴンが確認されている海域には、これらの条件が辛うじて残されています。
本来、ジュゴンの個体群存続可能性分析(PVA)を行なう場合、これらのジュゴンが利用可能な条件を満たした海草藻場がどれだけあるか、現場を確認しながら面積を割り出し、事業実施に伴う海草藻場の消失はもちろん、水流、水質、飛行ルート下の航空機騒音および船舶、施設からの騒音、低周波音、振動、船舶の航行、夜間照明などの影響により環境収容能力が実際にどれだけ減少するかを分析すべきでした。
理由2.
個体群存続可能性分析(PVA)を行なう場合、始めに個体群存続を可能とする最小個体数を示し、その個体数を維持するための環境条件を整えた海域面積が、事業実施によりどれだけ減少するかを分析すべきでした。アセスの調査で確認されたジュゴンは3頭でしたが、幸い海には垣根は無く、かつてジュゴンが暖かい南の海から黒潮に乗って分布を広げた海のルートは現在も繋がっており、今後沖縄海域にジュゴンが補充される可能性は残されています。(2002年10月、熊本県牛深市でジュゴンが混獲されましたが、このジュゴンは沖縄から黒潮などに乗り移動したと考えられます。同様にフィリピンからジュゴンが黒潮に乗り沖縄海域へ移動してくる可能性も十分考えられます。)今回のアセスでは、確認された3頭のジュゴンの存続が問われているのではなく、日本個体群の存続が問われているのであり、今回の個体群存続可能性分析(PVA)は、論点をすり替えた不誠実な分析だといわざるを得ません。
ジュゴンの棲息域が減少した近年において、ジュゴンが確認された海域や餌場は辺野古海域に限らず、ジュゴン自身が選んだ棲息に適した海域、或は辛うじて棲息が可能な海域と評価することができます。これらの海域は、日本のジュゴン個体群の存続及び回復という観点から大変重要であり、特に辺野古海域は沖縄島の中でもジュゴンの餌場となる海草藻場面積が特に広く、ジュゴン存続に不可欠な海域です。今回の個体群存続可能性分析(PVA)の結果を鵜呑みにし、沖縄県知事が埋立承認申請を許可したならば、ジュゴン個体群存続に致命的な悪影響を与えることは明らかです。
日本のジュゴン個体数は非常に少なく、正に絶滅に瀕しています。このような状況の中で私たちに出来ることとはいったい何でしょう。ジュゴンもトキと同じように人工繁殖させ、野生に導入すれば良いのでしょうか(系統群の問題はありますが)。ジュゴンの飼育の歴史は、1955年にサンフランシスコの水族館がパラオ産の個体を飼育したのに始まり、これまでに世界で30例以上の飼育記録がありますが、残念ながら飼育下で繁殖に成功した事例がひとつもありません。一方、野生下ではアセスの調査で親子のジュゴンが確認されたように、繁殖を続けています。つまり、ジュゴンの保存(存続)に必要なのは、ジュゴンが安全に暮らせる環境と十分な餌場を確保することであり、私たちに出来ることも、唯一生息地を保全することだけなのです。
かつて美ら海水族館元館長の内田詮三さんは、ジュゴンが棲む近隣国であるフィリピン沖には、沖縄に向かって毎時3ノットの早さで黒潮が流れており、ジュゴンがこの黒潮に乗れば、沖縄まで3日でたどり着くと語っていました。つまり現在確認されている3頭のジュゴンがいずれ死んだとしても、沖縄にジュゴンが補充される可能性は残されているのです。
また、沖縄のジュゴンは世界のジュゴン分布の東の北限にあたり、この地域個体群を保存することは、世界のジュゴンにとって遺伝的多様性確保の観点からも大変重要です。それぞれの地域個体群は、棲息地の地元が保全に乗り出さなければ守れないことを考えれば、沖縄県の責任は一層重大です。
以上の理由から、ジュゴン個体群存続に致命的な悪影響を与える普天間飛行場代替施設建設に係る辺野古埋立は、断じて認めてはなりません。
Posted by 沖縄BD at 21:24│Comments(0)
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