2013年07月10日

日本環境法律家連盟(JELF)の三石朱美さんの意見書

日本の環境問題に法的視点から取り組むNGO、日本環境法律家連盟(JELF)。
そのJELF事務局の三石朱美さんからの意見書を紹介します。

三石さんは、2010年名古屋で開催された生物多様性条約COP10で、そして昨年のインド・ハイデラバードでのCOP11でも沖縄の環境問題を国際社会に訴えてくれました。

彼女の意見書を読めば、辺野古・大浦湾の自然環境に対する国際社会の関心と懸念が、非常によく分かると思います。

日本環境法律家連盟(JELF)の三石朱美さんの意見書

(三石さんからの写真です)

意見書を書く、封筒に入れる、ポストに投函する。
一人ひとりのこの行動の積み重ねが、大きな動きになっていきます。

三石さん、ありがとう!

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利害関係の内容
私は沖縄県外に在住する者ですが、沖縄を訪問するたびに海の美しさに感動し、元気をもらう日本人として、沖縄の貴重な自然を後世に受け渡したいと考えており、第一級の沖縄の自然が残されている辺野古・大浦湾が埋め立てられることに危惧を抱いています。

また、日本国内の環境NGOで活動する市民として、沖縄の自然の貴重さ、辺野古・大浦湾の自然の豊かさを米国市民、米国内の環境NGOはじめ国際社会にも訴えています。

よって、本件埋め立て事業に明確に利害関係を有すると考えます。

意見
以下の理由で、辺野古を埋め立てるべきではありません。
1) 辺野古には絶滅危惧種であるジュゴンのえさ場である海藻藻場が広がっており、貴重な地域です。また、大浦湾では世界最大規模のアオサンゴ群落が発見され、現在も引き続き、この海域で多くの新種の貝類や甲殻類が発見されているなど、生物多様性のホットスポットです。今後もこの海域の環境調査・生き物調査が続けば、その自然科学的価値がより一層深まっていくことが明らかな場所です。このような貴重な場所が埋め立てによって失われることは、地球環境にとっても、将来世代にとっても大きな損失です。

2) 提出された評価書に対し、沖縄県知事が表明した多くの問題点について、今回の補正書では十分な回答がされていません。

3) また埋め立て土砂の調達についても、調達場所、調達場所別の土砂の量、有害物質の含有調査なども具体的に示されておらず、県外から搬入される土砂に含まれる外来種の調査方法なども触れてありません。

4) 実験段階から事故が多発し、危険性が指摘されているオスプレイの配備についても、方法書や準備書には記載されておらず、評価書段階で初めて記載されています。計画が変更されたのであれば、環境アセスメントの手続きそのものをやり直すべきです。

5) 2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議では、本会議の場で発言権を持ち200名を超す会議参加者がいた「生物多様性に関わる国際先住民族フォーラム(IIFB)」からも、閉会宣言で辺野古/大浦湾に米軍基地が建設されることによる環境破壊に対し、憂慮・懸念が表明されました。通常、国際会議で個別具体的な事例にふれることは稀なことでありながら、当時、議長国でもあった日本が行う埋め立て行為を具体的な地名を掲げて事業を特定し、憂慮が示されたことには格別の意味があります。

6) 生物多様性条約の締約国会議のプロセスでは、その後も、生物多様性保護に取り組む各国NGOの国際ネットワークCBD Allianceが発行する公式ニュース『ECO』でも、沖縄の基地と自然破壊に関し注意を促す記事が掲載されました。2012年にインドで開催された第11回締約国会議(COP11)でも、会議内の公式サイドイベントで、沖縄からの事例報告として、辺野古ややんばるに新しい基地を建設しようとする動きによって貴重な生態系が損失される危機に直面しているとの訴えがあり、参加していた多くのインド市民からもオバマ大統領、野田前首相に宛てた公開書簡が提出されるなど、市民社会からの憂慮は継続して示されています。また、COP10の閉会宣言で辺野古・大浦湾の開発に言及した「IIFB(生物多様性に関わる国際先住民族フォーラム)」の会議でも改めて計画が継続していることが確認され、多くの参加者からの憂慮が示されました。

7) アメリカ国内では、2003年に米国の環境保護団体や沖縄・日本の個人、環境団体を中心に、絶滅危惧種であると同時に文化財として琉球文化における文化的価値をも有する沖縄のジュゴンを保護するべきという趣旨の裁判が提訴され、その後、アメリカ連邦裁判所では米国国防総省は沖縄に棲むジュゴンへの配慮をしなくてはならないという判決が出されています。ジュゴン裁判は現在もまだ継続中であり、米国裁判所が出した米国国防総省はジュゴンに配慮しなくてはならないという判決は、米国の環境団体を中心に世界的にも広く知られ、注目されています。

8) また2010年には、アメリカ市民、日本市民を中心にワシントンポスト紙・紙面に意見広告が出され、辺野古が埋め立てられ、新基地が建設されることを「人々の健康や安全を阻害し、多くの希少種を含む独特な生態系を脅かす」と述べ「オバマ政権に沖縄の基地が必要ではないと伝えよう」と呼びかけられています。アメリカ市民の提案による意見広告は、その後も、インターネット広告などで繰り返し出され、米国市民からも辺野古・大浦湾の埋め立てを行うべきではないという意見が多く表明されています。

9) 上記のように、日本国内での環境アセスメント手続きがずさんに行われていること、また、国際市民社会からも、このようなずさんなアセスメント手続きに基づいて辺野古の貴重な海を埋め立てることへの反対意見が多く示されていることは、地球規模で辺野古・大浦湾の価値が評価されていることの証でもあります。

10) したがって、日本国・沖縄県は辺野古・大浦湾の埋め立てを認めるべきではなく、世界的に貴重な自然を後世に残すべく、努力すべきだと考えます。

pdfファイルはこちらです。20130707s%E8%BE%BA%E9%87%8E%E5%8F%A4%E6%84%8F%E8%A6%8B%E6%9B%B8s%E4%B8%89%E7%9F%B3.pdf (PDF: 124.8KB)




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